業界のボランチが教える “縫製工場で見るべき3つのポイント”

業界のボランチが教える “縫製工場で見るべき3つのポイント”

こんにちは、株式会社コムスペリオール 岩渕 です。

今回は、「業界のボランチが教える “縫製工場で見るべき3つのポイント”」と題して

コラムを進めさせていただきます。

最後に、このコラムをまとめた pdf のダウンロード紹介のリンクがありますので、
出張前の見直しなどにお使いください。

 

皆さんは協力工場さんを見る場合、どの様な視点で見られていらっしゃいますか?

勿論、立場や状況によってみる視点が変わってくるのは当然のことですよね。バイヤーの立場、生産管理者の立場、工場診断の立場等々で、見方が変わってきますよね。

工場診断の場合は、ある程度チェックリストのフォーマットがあり、それに沿って

社歴、資本構成、工員数、ライン数、生産量、主要アイテム、主要得意先、設備内容、原材料入荷から出荷までのプロセス、設備リスト、使用可能外注加工状況(プリント・刺繍等の二次加工も含め)、品質管理ルールとシステム、危険物(針・薬剤・ボイラー・ハサミ等)の管理方法、工員年齢構成、残業状況(月平均労働時間)、法定福利関係等の法的内容の遵守、安全管理基準と状況(防火・避難等)等々

を確認していきます。

でもこれは工場に行ってから調査しなくても、予め回答を得ておくことが出来ますよね。 私はこの部分を“カタログスペック” と呼んでいます。もちろん記載された工場からの回答の確認・検証は現地でしなければなりません。 会社への出張報告に記載する為の“カタログスペック”を現地でするのは、本来効率的とは言えないので、予め質問シートをメール等で送っておき、回答を得てから工場を見た方が効率が良いのは明らかですよね。 メーカーとの良好な関係を築く為にも、余り高圧的に予備調査を回答さすより、“訪問時にあまり時間を取らせたくないので、協力ください”程度のアプローチが良いかと思います。 この聞き取りに時間取ってしまって、肝心の現場を見る時間が無くなってしまっては、元も子も有りませんし。

 

コンピューターの本体(ハード)とそれを動かすOSの関係をイメージしてください。 使い勝手のいいパソコンは、ハイスペックなカラログデターとは限らず、OSが良いかどうか?良いアプリケーションを持っていたり新規をインストールしやすいか?などによりますが、ほぼこのイメージが“オーダーを出す側にとっての良い縫製工場かどうか?”と同じであると御理解下さい。

 

で、ここからが本番ですが、まず最初に理解して頂きたい点は、“工場のアピールしたい点”と、“訪問者が知りたい点”は、必ずしも一致していないということの理解が必要かと思います。 一方的に工場側の説明をしゃべらしても、訪問者がその目的を満足できるとは限らないので、この辺も準備して、最初に明確にしておくべきではないかと思います。

“縫製工場で見るべき3つのポイント”に関してですが、新規工場視察や工場診断の場合と、バイヤーや生産管理者が進捗状況や品質確認の場合では異なりますので、それぞれについて述べていきたいと思います。

 

< 新規工場視察 ・工場診断 > の場合は、次の3点

  • 工場のタイプやキャラクターを理解しようとする視点、意識を以って。
  • 工場のポリシーに一貫性が有るか?:: 見栄えの設備に騙されないで!!
  • やっぱり生産工場の基本は、5S に戻るので、基礎をチェック

 

では、個別に説明していきます。

① 工場のタイプやキャラクターを理解する。

実商売で結果を出すためには、ここの部分が本当に重要であることを理解してください。

・来料加工専門/製造販売 >> 原材料付属手当・ハンドリングが出来るか?(皆さん出来ると答えますが)

・工業技術的な落とし込みが自社内でできるレベル >> 上がりパターンからカッティングパターンへの補正・グレーディング、日本語仕様書からの翻訳機能。

この辺、バルクしないと見えてこない部分も有るのですが、聞けるだけ聞き出した上で、次のイメージを持ってください。

展示品や、現場で流れている商品、流し方や、上記のカラログスペックから、大体の見当がつけることが出来ると思います。

外食産業を例に取ります。

・和食 > 布帛、中華 > カットソー、洋食 > セーター?

・駅前の食堂 >少ロット何でも屋(名代ブラウスの看板が有るが、70点程度のドレスやパンツも縫える)

・ラーメン専門店 > アイテム限定(トラウザーは縫えるが5ポケットダメで、メンズのみ)

トンコツ系 次郎系 ではないが、カジュアル系とビジネス系では異なる。

・ファーストフード >限ったったものは安い・早い・うまい(Tシャツ全般対応だけど、ポロシャツ下手)

・ファミレス >中ロットでそこそこのアイテム範囲をカバー(スポーツ系カットソー全般、でもレディースエレ ガンスは下手)

・高級レストラン(天ぷら専門店、鰻専門店) > 専門的に細分化しながらアッパーベターの対応 ??

・給食センター > 工業品的な商品を、誤差ブレの少なく生産し続ける。

商材の特質・要求を掴んで、スタイルやキャラクターが有った工場のセッティングがスムーズな商売になるため、工場の理解が重要。

イタ飯屋さんで、カレーうどん注文したり、給食センターに小ロット特注バージョンを頼んだり、駅前の食堂に割安な一流料亭の味を要求したりしないでくださいね。

 

② 工場のポリシーに一貫性が有るか?:: 見栄えの設備に騙されないで!!

何をしたい工場なのか?良く判らない?? >> 生産ラインの設計と業態の不一致

他工場の物まねでハンガーシステム入れているけど、工程管理が出来ていなかったり、アイロが発生していても調整できていなかったり、見栄えだけで高い設備入れている。

>> 工場長やオーナーに研究心が無いまま、お金だけ突っ込んだ工場

高い設備を自慢したがる。 >> 高い設備 ≠ 生産性アップ&高品質

**この延長で、社長や工場長が、やたらいい車に乗っているのに、縫製に詳しくない::良くあります。。

・他所の工場の品質管理や、教科書の品質管理を丸ごと詰め込んで、現場になじまず、現実的でなかったり、合理的ではない。>> 普通そのやり方は破綻するので、ベースをいかに応用できるか?その改善活動を維持し続けることができるか??

 お金で正解を買い付けようとしますが、表層的なのが見えたり、チグハグ感が感じられたりしたら、要注意。

(ハイスペックなCP+OSで、メールとネットしか使っていないみたいな。。。>>コスト高いだけ!!)

 

③ やっぱり生産工場の基本は、5S に戻るので、基礎をチェック。

工場は常に問題を発生させるリスクを持ちながら進んでいます。 品質・生産性・ロス 等々。

トラブルが自社要因だけではなく、外部要因からも起きるのが前提で、トラブルを起こさないことより、起こった場合に早期に発見でき、対応できるかに集中した方が現実的かと。(原発工場ではないので)

問題の早期発見は、つまるところ5Sが出来ているかどうか?

・整理整頓できていなければ、トラブル原因のミスを誘発し、問題の発見を遅らせます。

・汚ければ修理の可能性を引き上げ、数字管理や納期管理にも影響が出ます

・工員が標準化された動作や、報告連絡をする為には、先ず躾。

・最後に工員の顔つきが結構、工場を物語ってくれます。(やたら工員の福利厚生を強調する工場も有りますが、集中して作業している工員の顔は違いますよね。)

 

< バイヤー ・生産管理者の進捗・品質の確認 > の場合は、次の3点

  • 工場担当者が生産状況、及び問題点を把握しているか?
  •  起こっている問題の原因分析・対応方法研究・実証確認が習慣化している?
  •  上記2点が出来る環境になっているかは、上の5Sと同じ。

 

では又個別にみると

⑪ 工場担当者が生産状況、及び問題点を把握しているか?

工場担当者に、各工程の完了率を数字ベースで把握しており、バランスと見通しが立っているか?

中国では比較的出来ていたことが、アセアンになるとどおしても動態数字管理が弱くなりがちです。

生産中の把握が不正確で、終わってからでないと判らない?と言う状況もしばしば見受けられます。

まずは、生産管理担当者が状況を把握できているか、面談で状況説明を細かく聞かれることを、おすすめ致します。

又、原材料、資材関係での不足や、欠品率等も大事な問題であるかと思いますので、その点も。

 

⑫ 起こっている問題の原因分析・対応方法研究・実証確認が習慣化しているか?

上でも書きましたが、“問題の発生が無いのが良い“のではなく、”問題の発生を早く見つけ解決する事が大事”であるとの視点から、品質で有れ、生産計画の狂いで有れ、発見した問題の原因を突き止める作業は非常に重要です。

その時に、なんでも答えを出せる人材が居るのではなく、組織的に研究できるチィーム(複数の人間)が形成出来ているか?がポイントです。 品質問題は、縫製加工中に発生しても、必ずしもその原因が工場内部にあるとは限らず、生地や服の設計に有ったり関係していたりしますので、幅広い知識が必要になり、経験ある人材が、チィームで対応できる体制、環境がポイントかと。

⑪⑫とも共通しますが、合理的でいい工場は、レイアウトをはじめ色々な点で視覚的に判りやすい工場に成ろうと努力しているのが見て取れる工場で、最新機器が並んでる工場ではありません。

 

⑬ ⑪の動態数字は、主に各ステーション(裁断・準備工程・組立・エンドラインQC・プレス・仕上げ・検品)ごとの状況ですが、1つのステーション内での偏り・フン詰まりの把握(ボトルネックポイントの発見)は、現場に立って見る事が一番手っ取り早いかと思います。 それを可能にするのは、やっぱり5Sかなと思います。 現場に必要以上に半製品が有ると、問題の発見が難しくなりますし、それが又新たな問題を引き起こします。 色々なシステムで、ミシン工程の各ワーカーの上がり数をリアルタイムでモニタリングできるものが有りますが、この場合でも5Sが出来ていないと、取り間違いや、品質問題の発見の遅れに繋がる為、やっぱり基礎中の基礎かなと思います。

 

 

なかなか具体的な“縫製工場の見方のポイント”の解説になっていなくて期待外れの感をお持ちかとも思うのですが、私自身が工場サイドの人間であったことからの意見であると御理解頂ければ助かります。

見られる方の立場として、視察を機会に社内・工場内を引き締めるチャンスでもあるとも捉えていましたが、視察ツアーのスケジュール消化?みたいな感じの視察経験も結構有りました。

 

基本的に内容のある工場視察のポイントは

  • 行く前から始まっており、準備行動 : カタログデーターと視察ポイントの明確化
  • 現場では個々のパーツを見るのではなく、先ず全体から見る事から始めイメージを掴む意識を
  • 現場に入ってのポイントはやっぱり5S

と思います。

工場は、十人十色で、営業(=受注)形態やアイテム、地域特性等々によってベストの形は異なります。

無論それぞれの条件で、モデル的な形態・システムは考えられるのですが、今の姿の見栄えより、改善が継続的に行えて行けそうか?の方が長く付き会える工場ではないかと考えます。

以上です。

このコラムをまとめた pdf を下記のページで配布しております。
出張前の見直しなどにお使いください。

業界のボランチが教える ”縫製工場で見るべき3つのポイント” まとめ